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【患者の訴えの原因を明らかにして、期待に応えられる治療技術を選択する】

 

その前提となる「運動器疾患に対する標準化された評価法」の普及と習得を目的として活動しています。

運動器標準評価法習得コース​開催にあたって

理学療法は、基本的動作である寝返りから立ち上がり、歩行を訓練するものではなく、基本的動作能力を阻害する因子を予防改善するものであり、純然たる医療です。だからこそ「世界医療専門職同盟(World Health Professions Alliance)」は,「世界理学療法連盟(World Physiotherapy)」を構成組織として受け入れているのです。

 

理学療法の定義には、国内法や「世界保健機関(WHO)」など様々なものがありますが、「理学療法とは何か」と問われたときの私見は以下になります。

 

理学療法とは、「運動機能評価に基づき運動機能障害の予防改善を図るとともに、運動機能の維持向上により健康増進やスポーツにも寄与するもの」といえます。

 

疾病診断を行い、疾病治療をするのは医師の専権事項ですから、理学療法士(PT)がこれらを論じてはいけません。私たちは「疾患」ではなく、「運動機能」を対象にしますので、運動機能障害の原因疾患を問いません。したがって運動器理学療法は、「運動器疾患による運動機能障害」を対象としており、神経理学療法は「神経疾患による運動機能障害」を、呼吸器理学療法は「呼吸器疾患による運動機能障害」、循環器理学療法は「循環器疾患による運動機能障害」を対象にしているのです。

 

専門職には高度な知識や技術が必要とされ、運動機能を対象にする私たちPTには、解剖学や運動学に関する深い知識と、これに隣接する多くの分野の知識が求められ、さらに熟練した専門技術が要求されます。これらは運動器に関わるPTの共通項目であるべきです。

 

例えば腰が痛いと言って整形外科を受診すれば、全国どこの医療機関においても同様の検査が行われ、同じような処方が為されるでしょう。ところがPTの場合は、施設や個人によって全く異なる検査や治療が行われているということがあります。運動器に関わるPTに共通する評価が行われていたならば、手技は様々でも同じ目的の治療が選択されるはずです。そうならなければ専門職としては認められないのではないでしょうか。

筋力検査(MMT)や可動域(ROM)検査、感覚(Sensory)検査、そして日常生活動作(ADL)検査を測定し、疼痛があればVASやNRSで主観的な痛みの程度を判定する。そんな検査測定を学生時代からたたき込まれると、問題点は筋力低下にROM制限・ADL低下になって、プログラムは筋力訓練、ROM訓練、ADL訓練になってしまいます。「訓練」を「練習」や「トレーニング」と言い換えたところで本質は何も変わっていません。このような評価を養成校時代からの友人荒木茂氏は「MRSA評価」と呼び、これが今も尚本邦のPT業界に蔓延しており、50年前の教育と何ら変わらないと嘆いています1)

 

例えば制限因子を特定しないまま行うROM訓練とは何でしょう。単に他動的に動かすだけでしょうか。正常なROMは生理的関節における様々な構造体によって確保されています。したがってそれらの全ての構造体は関節の制限因子になり得るのです。どの構造体が制限因子なのかを明らかにすることが評価の目的です。

患者の訴えの原因が関節原性(非収縮性組織)なのか、筋原性なのか、あるいは神経原性なのかによって当然アプローチは異なります。様々な治療技術の習得にも励まなくてはならないのですが、習得した治療技術を正しく選択・実施できなければ画餅に過ぎません。多くのPTは治療技術の習得には熱心なのですが、評価については如何でしょうか。

 

理学療法は一流のシェフや演奏家と同様に極めて創造的な仕事であり、ものづくりの匠の技(職人技)に似ています。免許があれば誰でも同じではなく、疾患や症状に対応した様々な評価技術・治療技術の習得に努めなくてはならず、現役でいる限り学び続けるものです。同じように検査や治療を行ったつもりでも、個々のPTの技量・熟練度によって異なる結果になるという事実を直視できなければいけません。そしてそれは何故か、何が違うのか、何が足りないのかを常に自問し、たゆまぬ練習を続けることでのみ修得が可能になるのであって、座学のみでは決して身に付くことはありません。但し、誰もが努力すれば匠になれるわけではないことも事実です。だからといって匠を目指さない限り専門職とは言えないのも事実です。全員が60点の集団に当たり外れはないでしょうが、誰も感動しないでしょう。1点でも2点でも常に高みを目指す者が専門職なのであって、誰でも練習した分だけは必ず上達しますし、超一流にはなれなくてもその姿勢こそが自尊心を失わない専門家なのだと信じています。

運動機能の専門家であるPTは、基本的な知識と技術は絶対に習得しなければなりませんし、さらに経験が必要です。安全で効果的な治療手技を選択するためには、患者の訴える症状の原因を特定し、運動機能障害の全容を理解することが必要ですから、そのための第一歩として本講習会を企画しました。特殊な理論に基づく特異的な検査ではなく、解剖学と運動学で全て説明のつく評価が標準化されなくてはなりません。

 

運動器を対象にするPTの誰もが共通する評価を実施することが、一定水準の「良質な理学療法」を提供するためにも必要だと信じます。

​2021年6月 会長 林寛

分献

1.荒木茂:理学療法士列伝―EBMの確立に向けて.マッスルインバランスの考え方による腰痛症の評価と治療.三輪書店.2012

運動器標準評価普及協会
​主任講師紹介

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林 寛 先生 PT,OMPT (1955.5.10生・岐阜市出身)

 

著書

拘縮の評価と治療、系統別治療手技の展開、整形徒手理学療法など

職歴

1978.3    国立近畿リハビリテーション学院 理学療法学科 卒業
1978.4    名古屋市立大学医学部付属病院 勤務
1980.4    羽島市民病院 勤務
2004.4 滋賀医療技術専門学校 勤務
2009.4 彦根中央病院 勤務

経歴

1986.5 岐阜県理学療法士会 理事
1991.5 岐阜県理学療法士会 副会長
     社団法人日本理学療法士協会 代議員、学会部員、業務推進部員
1998.5 社団法人岐阜県理学療法士会会長 2004年4月まで3期6年
2002.8   社団法人日本理学療法士協会業務推進部副部長 2006年度まで
2004.5 社団法人岐阜県理学療法士会社外理事 2008年3月まで
2009.12 滋賀県理学療法士連盟会長 2012年12月まで
2013.4 日本運動器理学療法学会 運営幹事 2019年3月まで3期6年
2021.9 第9回日本運動器理学療法学会学術大会 大会長

 

徒手療法関係
1990.11 IFOMT準拠徒手療法国際セミナーKaltenborn-Evjenth International 修了
1995.4  同セミナー 指導助手
2003.11 OMPT(運動器徒手理学療法士) Diploma取得(K-E OMT)
2010.2  OMPT Instructor認定(K-E OMT)

(公社)日本理学療法士協会 日本運動器理学療法学会 専門理学療法士
国際運動器徒手理学療法士連盟IFOMPT 正会員
日本運動器徒手理学療法連盟JFOMPT 正会員
一般社団法人日本運動器徒手理学療法学会JAOMPT 正会員

運動器標準評価協会
​事務局

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会長

林 寛

事務局長

小木曽 信裕

スタッフ

鎌田 友理

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田島 嘉人

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玉木 宏明

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富田 純也

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西田 智一

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